花葬画
青く光る電影から逃げて。
高く唸る伝令から逃げて。
世界がうまく回らなくなっていく。
凍えた舌が回らなくなっていく。
きみの、予感、視点、予言、光、鮮やかで。
うらめしや。
きらめく過去、終わらないハーモニー。
あそばせあそばせてゆらゆら揺れてる。
星のバス停へ急いで行かなきゃ。
お気楽なぼくらは罪でも数えましょう。
透明なままで足早に去る。
トワイライト、歌え。
すべて灰になるまで。
存在価値も幽霊船積んで、死出の旅へ。
うらめしや。
機械のように止まらないアイロニー。
ガラクタに名前を。劇薬は痛いの。
前の科白がずっと繰り返されて。
単純な感情が数えられなくなったのね。
あなたに会いたい。眩暈も起きない。
ひとつ、ふたつ、甘く、苦いもの。
むしゃむしゃ、もぐもぐしたら。
きみになれる?
ジオラマの街
朝はいつも苦手
黒い天井を見上げ
まだわたしはあの人に気づかない
窓の外には
背の高いビルが犇めく
「なぜだか、もう何年もこの光景を
ここに立って見ていた気がする。」
昨日できた店が今日は公園に変わった
「あぁ、空からあの人が見ている。」
あなたは鳥のように空を舞った
赦されないだろうか
未設定の口づけは
時刻通りに世界は夜だ
音も立てず、何回目のコンティニュー
窓の外には
知らない街が生まれた
「もういや。」
でも、ここには居場所があって
大好きなあなたもいたから
あなたは風のように雲を割った
赦されないだろうか
あの人に気づかれた
花束が散る、道路がえぐれ、時が止まる
コンソールのSEが聞こえる
あなたは男性Aに入れ替わった
「この記憶も壊して。
バグまみれのこの体も、街も。」
Mrs.エイプリルの韜晦
鉛筆を転がして世界と戯れる
人類は夢寐のスノーグローブの中
自己韜晦癖があるの? ツェツェガール
ナチュラルメイク焦がしてセルフコーディネート
ラバーシューズ脱ぎ捨て 夜を試着して
4月はそろそろカーテンの向こうだ
消しゴム黒ずむ 右手を掲げ
賛成よ 賛成よ それに賛成よ
そう Mrs.エイプリルは嘘色のチークを上塗りして
Mrs.エイプリルは研究室の真ん中で寝たフリして
背中の魚が泳いでる
揶揄して 嘲笑して 何かを失った
自己韜晦中のキミは鬢揺らし
知らないよ 知らないよ わたしには関係ない
そう Mrs.エイプリルの鳥瞰したその目が大嫌い
Mrs.エイプリルよ 狭い狭い象牙の塔でごめんなさい
あなたには くだらないことだよね ハッ!
(エンゲージリング光らせて
不安も自信もないその表情が大嫌い)
Mrs.エイプリルの順風満帆な人生が青いんだ
Mrs.エイプリルは研究室の壇上で歌わない
Mrs.エイプリルは嘘色のチークを上塗りして
Mrs.エイプリル スノーグローブの中に逃げ込むなよ
ナイストゥミーチュー
それはきっとパっと現れてはふっと消えてしまうわ、透明色の淡い恋心。
待って! もっと君が知りたい。もっと君が知りたいの。
青空砕けて全部融けてしまうわ、融・け・て。
これはきっとパっと現れてはふっと消える雲のよう。
傷を舐め合う i.e. パラノイア。
待って! もっと君に触れたい。もっと君に触れたいの。
もう一度はじめから、全部消してしまえよ、融・け・て。
これは Nice To Meet You? そうよ Nice To Meet You!
僕は Nice To Meet You! 君と Nice To Meet You!
君はきっとパっと現れてはふっと消えてしまうわ。
変えることのできないバッドエンド。
そして緻密な計算で産まれたての心で僕は君を知る。
どうぞよろしく。
これは Nice To Meet You? そうよ Nice To Meet You!
僕は Nice To Meet You! 君と Nice To Meet You!
これが Nice To Meet You! 最後の Nice To Meet You!
ひとり Nice To Meet You! 君と Nice To Meet You!
夢見る魚
もしも世界に謎がなかったら、すべてのものはゼロに戻るだろう。
でも「謎を解き明かせ」君は言う、楽しそうに。
フラスコを振り続けるんだね? 化学変化が起こりそうな嵐の中。
パズルを組み立ててくんだね? 大好きなエリック・サティを聴きながら。
もしも世界があなたのものなら、すべてのものは博愛に染まるだろう。
でも「君を愛してる」ぼくは言う、哀しそうに。
トートロジーを投げ合うんだね? 科学者たちが夢で見たユーリカを。
朝寝て夜生きるぼくらは大好きなエディット・ピアフを口ずさむ。
フラスコを振り続けるんだね? 化学変化が起こりそうな嵐の中。
経験を積み上げてくんだね? 大好きなエリック・サティを聴きながら生きよう。
8月のピアニスト
8月のピアニスト、びしょ濡れで歌えよ。
透明な旋律を熱帯夜に轟かせろよ。
海上のピアニスト、炎天下で歌えよ。
飛行機が燃えている、それがきみの失敗。
旅に出よう、雲の上。蝉の音を聴きながら。
サイダーを飲みながら、オンコードを掻き鳴らすのさ。
8月のピアニスト、びしょ濡れで歌えよ。
透明な旋律をきみの手で奏でよ。
8月のピアニスト、汗だくで歌えよ。
透明な旋律が入道雲の上で揺れてる。
サイレンに微睡む
「サイレンが鳴った」朝は来ないのさ。
病棟のドラムメジャー、夜を被る。
「警笛が鳴った」空に落ちるんだ。
おもちゃ箱ひっくり返るガラクタ。
ぐるぐる回る回路で、ぐるぐる回るあなたは、
ぐるぐる回る遊具に乗っかって車掌さんごっこだ。
海を黒で塗り潰したいね、誇大妄想の王子様と。
空想に溺れ、白い部屋でディナー。
恋人の弔いは翌る日の朝まで続いた。
殺したいくらい、預言者の父と帰天した母よ、愛しているよ。
遠くの街で生まれた鳥、怪我した羽。
救いを頂戴、お導きを。
ひとりお医者さんごっこだ。
海を白で塗り潰したいね、誇大妄想の王子様を。
ぐるぐる回る時計と、ぐるぐる回る地球と、ぐるぐる回る生命よ。
「サイレンが鳴った」君はいないのさ。
病棟のドラムメジャー、布を被れ。
「サイレンが鳴った」君しかいないのさ。
お医者さんはお薬をくれなくなった。
中庭で賛美歌を。
「再来を待つ」
「懐かしいよね?」
「サイレンの中」
「また遊ぼう」
臨海副都心
東京の街で孵化したあの娘は今日も、
アメリカンスタイルの喫茶で彼氏とデート。
有明のホームであいつが吹かした嘘。
東雲ICで大規模な火災が起きたのよ。
東京の街は不可視の怪物だった。
足跡は消してけ、痕跡は残さないで。
豊洲でお買い物、大型のショッピングモール。
蜘蛛の巣のように火災の被害は止まらなくなるわ
Traffic Monster! Rollin’! Rollin’!
Traveling Messenger! Rollin’! Rollin’!
Traffic Monster! あなたはこの街をただ走り続けて。
東京の街で孵化したあの娘は歌った。
論理は捨ててけ、非常ベル響く前に。
レインボーブリッジのプロムナードでバイバイ。
この燃えるような感情は東京湾に捨ててしまうわ。
Traffic Monster! Rollin’! Rollin’!
Traveling Messenger! Rollin’! Rollin’!
Traffic Monster! あなたはこの街をただ走り続けて。
cocoon
ここが世界の中心なら、ここであなたと交信したい。
同じ空を見てみたいから、カロリー消費抑えていたいから。
同じ色を見てみたいから、ひとりぼっちは怖すぎるから。
同じ海を見てみたいから、アイデンティティー薄めていたいから。
同じ夢を見てみたいから、凍結された僕らは生きる。
あぁ、水槽の中だったわ。ここでわたしは本を閉じる。
供給された培地の上で培養液を受け取るだけさ。
凍結された僕らは生きる。
ここはパラダイス?
ここは、パラダイス?
frog
ある日彼は影を失くした。セーターが解けるように、今。
夜毎彼は影求めて、縫糸を手繰っていた。まだ意図を知らず。
カエルくんは東京を救った。わたしは土の中で歌う。
夜毎彼はゲーコゲーコ笑った。身体を汗でびしょびしょにして、意識の海へ。
完璧など在りはしないのさ。隙間を埋めるゲームをしよう。
彼の中のわたしは叫んだ。決戦の白日夢だ、さぁ。
「こんなことはもうやめようよ」が口癖で。でも、争いは終わりはしないでしょう。
だけど「終わらないことが素晴らしい」と彼は言う。
今日も地震が起こる? 君の世界で、また。
東京を救ったヒーローに彼はなれたから、満足をして縫糸を手放したのさ。
カエルくんもわたしもいつもここにいる。
今日も地震が起こる? 想像の中で。
さぁ、夢の中で夢のない眠りに落ちていく。
君は気付けるかい?気付くことに気付けるかい?
終わりが来たその瞬間を思うから、きっと地震が起こる?
君の世界で、また。
春、プールサイドの気象予報士
彷徨い歩く僕は亡霊さ。
お気に入りの傘を持てよ、雨になるから。
14回目の春が君を襲うだろう。
お気に入りの傘を持てよ、雨になるから、予報ではね。
『それはとても温かい経験だろう?大好物の雨だろう?
ひとり孤独な夜が楽しいだろう?
そうか、ならば傘をさせ!傘をさせ!』
彷徨い歩く僕は亡霊さ。
お気に入りの傘はどこだ、どこに置いたの?
透明な嵐が君を襲うだろう。
お気に入りの傘を失くすな、どこに置いたの!
おい!どこだ!
知るメメント・モリ、プールサイドにて。
雲が騒ぐ、春風のせい。
知るメメント・モリ、プールサイドにて。
僕は死んだ。透明だね、気象予報士。
知るメメント・モリ、プールサイドにて。
雲が騒ぐ、春風のせい。
知るメメント・モリ、プールサイドにて。
僕は死んだ。透明になった。
知るメメント・モリ、プールサイドにて。
君はどこだ、君がわからない。
知るメメント・モリ、プールサイドにて。
僕は死んだ。透明だね、気象予報士。
Mr.Hippopotamusの煩憂
騒げ、騒げ、僕は馬鹿だよ。騒げ、騒げ、僕はカバだ。
騒げ、自称エコノミストの語るは現実との相違、SORRY!
騒げ、騒げ、君も馬鹿だよ。騒げ、騒げ、君はロバだ。
騒げ、自称評論家の語るは真意との相違、SORRY!
騒げ、騒げ、僕は馬鹿だよ。騒げ、騒げ、僕はカバだ。
騒げ、自称クリエイターの語るは自己顕示欲、SORRY!
騒げ、騒げ、君も馬鹿だよ。騒げ、騒げ、君はロバだ。
騒げ、自称人気者の語るは自己顕示欲、SORRY!
舟の上で読んだ本
寝る前にきちんと歯磨きをして正装に着替えて彼女を待つの。
踊り出す心臓の鼓動のリズム。
舟の上で読んだ本は海にぽちゃり溶かせばよい、知恵になる。
彼女はね、あなたのお嫁さんになる。
あなたはね、彼女のお婿さんになる。
わたしはね、ふたりの祝福を待つ。
はじまりの朝、おわりの夜。わたしがまだ生まれる前、待てない。
今、とても退屈な海上でわたしが読んでるドラマチックなミステリ。
これからはじまる経験を想像してしまうから、笑えない、つまらない。
膨大な知識をどこかに焼き付けた。広大な世界をどこかに焼き付けた。
わたしはね、全知全能の神様になる。
一息の朝、永遠の夜。わたしがまだ生まれる前、待てない。
今、とても退屈な海上でわたしが読んでるあらゆる分野のバイブル。
これからはじまる経験を想像してしまうから、古臭い、つまらない。
寝る前に読書を彼女の朗読で。わたしはね、瞼が徐々に重くなる。
素晴らしき経験がわたしを待っている。
ふらついて舟から海へ落っこちた。なすがまま、すべてを忘れ流される。
わたしはね、彼女とあなたに出逢うの。
アカシャ年代記
どこだ? ここよ。
歴史の真ん中でふたりはかくれんぼ。
世界は比喩だらけ、ヒントは散りばめたわ。
目醒めよ、その時は来た。
もういいかい?まだだよ。
目醒めよ、その時は来た。
もういいかい?もういいよ。
涅槃の入り口で気づきのかくれんぼ。
どこだ? ここよ。
思想犯
おいでませ、おいでませ、心地よい危険思想。
おいでませ、おいでませ、きっと戻る舟はない。
きっと、今ならばわかる、君の思想。
今ならばわかる、どうかこの時代に再来を願う。
おいでませ、おいでませ、邪な囁きの中。
おいでませ、おいでませ、もう戻る選択はない。
なぜ理解できないの?僕の思想。
君ならばわかる、どうかこの時代に再来を。
おいでませ。
クジラの背で夜を待つ
ここはとある街の中心、君が笑うくだらないことで満ちている。
ここは君の街の中心、白昼夢の出口を探せ。
きっと争いを拒んで、見知らぬ景色を拒んで、笑えない、泣けない。
きっと恐れを抱いて、厚化粧キメておでかけ。“迷子の自分”探しだ。
ここはとある国の中心、誰も彼もが笑うシャンバラなのさ。
今日もクジラの背の上で夜を待てば何を悟る?
きっと平穏を望んで、似たような景色を望んで、笑えない、泣けない。
きっと期待を抱いて、ハリボテの服でおでかけ。“迷子の自分”探しだ
きっとクリエイトな人生。よく似てる君と出逢って笑えよ、泣けよ。
ありのままなぼくらは期待と恐れを手放し、わくわくに満ちていくんだろう。
メリバの国
ひらひら蝶々の見た夢の中。きらきら籠の鳥は綺麗。
ぱかぱか歴史という馬の御者になる。ちりんちりん最後の呼び鈴。
メリーバッドエンドの国へ行こう、わたしと。
ぶつぶつ法螺吹き少年はまた、どしんどしん大地怒らせた。
ぱかぱか自分という馬の御者になる。からんからん警鐘轟く。
メリーゴーランドに乗りながら歌おう、あなたも、わたしと。
落馬した。失敗した。わたしたちは落馬した。
わたしたちはもういない。
メリーバッドエンドの国へ行こう。
落ちて行くわ、あなたと。落ちて行くわ、わたしも。
ふたりの終わりへ。
マイハットファンタジー
マイハットを差し上げましょう。
ダウンタウンは今日も騒がしく歌うよ、踊るよ。
マイハットを差し上げましょう。
魔法を唱えよう、世界はあなたのものさ、マインクラフト。
マイハットを差し上げましょう。
数ある中から好みのを探そう、選ぼう。
マイハットを差し上げましょう。
魔法を唱えよう、世界はあなたのものさ。
でかけよう。
あなたは何を選ぶ?そろそろしたくしなきゃ。
鏡の前で選択のとき、わくわくするの。
あなたの世界さ、世界だ。
ワン・ツー・スリー!ワン・ツー・スリー!マイハットファンタジー!
反芻と孵化
白い毛皮を被った裏通りの魑魅魍魎。
白山羊に化けたつもりで理性を失うストーリーの揺籃期。
大好物の砂を噛め、搾取される住宅地では。
なぞなぞを出し合うふたりは正答を嫌うピノキオ。
黒山羊に化けたつもりで理性にしがみつくストーリーの揺籃期。
ただ、愛されたい、生きていたい、死にたくない。
お導きを。
prop
阿弥陀籤を引いたよ。
わたしの作ったそれはひとつに収束され夢を造り出した。
きっと絶望とは愛情と表裏一体の大事な大事なわたしの一部だ。
忘れてしまえるなら。でも忘れたくないものと。
性懲りもなく TSUKA NO MA NO DAY DREAM
ここは楽しい煉獄なのだ。
狂ってしまうほど楽しい世界ね。
あなたのいない世界。
きっと博愛とはあなたが思っているほど重い罪なのだ、この世界では。
不気味な違和感と向き合えるその日まで。
わたしは目を閉じ TSUKA NO MA NO DAY DREAM
あなたに放り出された完全すぎる世界で夢を見たよ、とてもとても楽しい夢を。
さぁ不完全で歪で完璧なわたしの造った庭で遊びましょ。
やっと、はじまりだよ。ほら、おわりの警笛だ。大事な大事な最高の友達。
不気味な違和感に気付かれるその日まで。
わたしは目を閉じ TSUKA NO MA NO GOOD DREAM
ロストガーデンでの告白
わたしの一言でアニメーションがスローに変わる。
あなたの中に棲む悪い夢をわたしが全部呑んであげるから。
見えない水脈を回遊してる。空のクジラは喘息を患う。
壊せないフィルムを回して遊ぶ。ベッドの上での喘ぎ声、息遣い。
あなたの一言でグラデーションが色を増した。
わたしの中に潜む言葉をあなたは全部食べてくれた。
楽園は崩れていく、いいさ、ふたり騙されても。
あなたを意識しはじめたから、楽し過ぎて動けなくなったよ。
ゆらゆら漂う海月の様にふたり笑う。
まだ?まだ?…まだ?まだ?まだ?…もういいかい?もういいかい?
「はじまり」と「おわり」と「いま」。
まだだよ…まだだよ…ほら…目を閉じ、お呪い唱えて。
ほら、また崩壊が進む、わたしの指先から肩まで。細胞もすべて。
きれいで醜い世界でのわたしの物語はここまで。幕を閉じよう。
わたしは見てみたい、わたしの消えた世界のあなたを。
あなたを愛しすぎてしまったから、もう何もいらなくなったんだ。
あなたの一言でアニメーションがスローに変わる。
苦しむことのない世界なら、わたしの居場所はもうないんだよ。
白紙
会議の途中で席を立つ独裁者。世界の掃除を始めるための準備かい。
わたしはぽかーんと口を開けた偽善者。口答もしないで作り笑いお上手ね。
愛の言葉、便箋に書く本心は日曜画家のとても哀しい感情の海。
現実と虚構のどちらを選ぶ傍観者。積み重ねた紙屑の山崩れた。
どうしたら、わたしは赦されるだろう。書き始められない。
二言目には不運を語る青年は瞳に住み着いた黒い悪魔を見つけられないのかな。
愛の言葉、ぐしゃぐしゃになった本心は汚れた手の中で丸まる白い便箋。
窓を開けろ、掃除だ、青空を。街中に鳴り渡る警笛を。
埃塗れ楽しい音楽を。内に向けた感謝の花束を。
思い出せよ、知恵を、経験を。可愛くて憎らしい神秘を。
大嫌いで大好きな音楽が鳴り終わったら、灯りを消してくれ。
ワールド・キッチン
エプロンに着替えて食材は用意された。
あなたの目の前に宇宙規模のキッチンがほら。
ほろ苦く? 甘酸っぱく? 塩辛く? どうする?
どんな調味でもいいよいいよって。
どんな料理でもいいよいいよって。
最高のスパイスはあなただけが知っているわ。
視覚と嗅覚で惑わせて、迷わせて。
幻想に溺れてく、沸騰した海の中。
こんな調子でもいいよいいよって。
こんな状況でもいいよいいよって。
PAPRIKA
何が見たい?何が見たい? 夢が見たい、夢の中で。
何を見てる?君は何を見てる? 夢を見てる、夢の中で見てる。
サーカスのはじまり、短い悪夢のお目覚め。
彼女は笑顔でこの世界を飛び回る。
境界線を引け!わたしたちが壊れてしまうから。
覚醒を待て!でも世界は理不尽。
悪夢はここまで苦しい現実のはじまり。それも嘘かもよ? 楽しい夢にようこそ。
悪夢はこれから苦しい現実はおしまい。それも嘘かもよ? 楽しい夢にようこそ。
悪夢のはじまり、楽しい現実のはじまり。すべて嘘かもよ? 楽しい夢もおしまい。
さぁ夢を操り、楽しい夢のはじまり。すべて嘘かもよ? 楽しい嘘をはじめよう。
トリコロール
世界の不思議を解き明かしたいな。
それはあなたにしかできない大事な使命。
赤と青の線、足した白の線、トリコロールみたいできれいね。
珈琲の薫りで目を覚ましたいな。
そして毛布の中の君に優しいキスを。
赤と青の線、足した白の線、トリコロールみたいできれいね。
赤はわたしで、青はあなたで、白は君で世界は賑やか。
「おはよう、こんにちわ。」 同じ顔で同じ顔に。
「おやすみ、ありがとう」 同じ夢を。
「おはよう、こんにちわ。」 同じ顔で同じ顔に。
「おやすみ、ありがとう」 強く生きて。
惑星日誌
わたしは誰かと交信中。惑星の運動の途中。
ハイヤーセルフを演じる君と荷造りはじめた月曜日。
見知らぬ景色を渡り、終わりのない再生の宴。
ニューエイジを語り出すモニター、荷造りはじめた日曜日。
はじまりを知り、笑いたい、遊びたい。
“わたしは今ここにいる”
光のように進んでいくわ、あの時、あの場所へ一瞬よ。
“―そうだね”
はじまりを知り、笑いたい、遊びたい。
“わたしは今ここにいる”
光のように進んでいくわ、あの人、あの感触へ一瞬よ。
“―そうだね”
わたしは誰かと交信中。惑星の運動の途中。
ハイヤーセルフを演じる君と荷造りはじめた瞬間のこと。
ユメダカ
ユメのナイヨー、キミわオモイダせる?
ユメのナイヨルをキミはオモイダせる?
ユメのナイヨー、オモイダせないヨ。
コワくてタマラない、オネショしてしまうほどに。
ユメみて。
シナモンルーム
彼女はうたう、生まれたての夢の中見渡す。オンナになる?
素敵な言葉で惑わせて夢の中歩こう、少女のまま。
もう、この世界は遊び尽くした。退屈なのだ。
でもね、あなたがいた。あなたがいたの。
彼女は踊る、水しぶきを浴びながら。舞台のあなたは綺麗。
素敵な音色で惑わせて音の中泳ごう、少女のまま。
もう、この世界は遊び尽くした。退屈なのだ。
でもね、あなたがいた。あなたがいたの。
水族館で、遊園地で、植物園で、あなたの傍で。
彼女はうたう、目を閉じて、夢の中。
素敵な言葉で惑わせて、ユメのナカ。
箱の中の学者は言う
傘を逆さにさして羊水に浮かべる舟さ。
あなたの精液を注いで小さな愛を吐き出すのさ。
はじまりばかりを紐解き、今生の謎を投げ出し。
アルコールランプが灯る理科室では卑猥なことばかり。
白い部屋からまた抜け出して箱の半分を君にあげるよ。
朝の気怠さが幸せ。空腹の音だ、笑えよ。
食パンとミルクを食べたら出かけよう、退屈な講義へ。
今生という講義へ出かけよう。
1889
争うのは南蛮人と紅毛人。争うのはカトリックとプロテスタント。
外患誘致を企てた売国奴。相容れない排他的な自由。
インソムニアに苛まれて苦しいの。
世界の嵐のまっただなか、騒がしいの。
風が吹いてくる、コンサート・オブ・ヨーロッパ。
風が吹いてくる、フローレンス・ナイチンゲール。
海洋覇権をよこせよと、大英帝国。
大陸覇権をよこせよと、ロシア。
インソムニアに苛まれて苦しいの。
世界の嵐のまっただなか、騒がしいの。
わたしが生きた疾風怒濤の時代は近現代史の分岐点となるようだ。
富国強兵、殖産興業、帝国憲法だ。
文明開化踊れ踊れよ、歴史の上で。
休日のフライト
パスポートを失くしたあの娘はもう、この便には搭乗できないようで。
パパはまた嘘をついているのよ。荷物も持たず、両の手で大きく手を振った。
休日のフライトだ。どこへいこうか。この便なら過去も未来もいけるぜ。
それはそれは天国のような匂いで、噎せ返るような光と熱を浴びたみたい。
もっと素敵なことしよう。
気を失うほどのもっと素敵なことしよう、退屈の中。
もっと素敵なことしよう、息もつけぬほどの。
きっとパパの優しい嘘をあの娘は赦せない。
もっと素敵なことしよう、世界の外れで。
きっと素敵な話を聞かせに戻るよ。
休日のフライトだ。どこへいこうか。この便なら過去も未来もいけるぜ。
ここはここは空気が薄くて、噎せ返るような光の中。
戯画
ディープダイバーの消失、積み木は崩れて散った。
禁断症状を催した少女とガリレオを嫌う少年。
アマチュア哲学者の戯言きれいごとの羅列をなぞる。
麻糸で綴じた未来を解く魔法を唱えよう。
だいだらぼっち嗤った。ふたりを連れて逃げだした。
祈り続けることで救われるのかな。バイブルを破り捨てて旅に出よう。
インメルマンターンの失敗、声を失うパイロット。
悪夢を探すユメクイと無気力なペイトリオット。
わかっているのなら訊かないで。きれいごとばかりを語らせないで。
あなたの汚らしいところ、もっと見せて。汚しあい笑いあおう、この世界で。
かくれんぼに飽きた避役。釣り針を求めさまよった。
期待した通りの反応をどうも。愛をこうと決めつけた、おバカさん。
だいだらぼっち叫んだ。ひとりを連れて逃げだした。
あなたの汚らしいところ、もっと知って。赦しあい笑いあおう。
また、ふたりで。
橋の下のブガッティ
ヨット、サイダー、ひまわり畑、あの橋の下のブガッティ。
彼のイーゼル、レンブラント。あの情景が目の前に。
ずっと踊ろう、ひまわり娘。秘密基地と化したブガッティ。
きっと君は気付くだろう。この恋に終わりがあること。
ずっと踊ろう、ひまわり娘。
プロパガンダイバー
本日はお時間を頂戴して情報の海を泳ぐための教訓を。
プロパガンダーのレッテルを貼られても彼も彼女も知りたくて知りたくてたまらない。
ヘイトスピーチには飽き飽きなのさ。ニットピッキングして罵倒する極論者。
生中継での掏り替え答弁。もう偏向報道する新聞は焼き捨てるのさ。
歴史の教科書は自作のもの。インターネット図書館から集めた資料。
先生は取り上げて踏みつけた。「こんな情報は捏造だ、捏造に違いない。」
ブレインウォッシングには飽き飽きなのさ。自由を履き違える極論者。
堂々巡りの空想質疑。もう偏向報道するテレビは点けないのさ。
ヘイトスピーチには飽き飽きなのさ。ニットピッキングして罵倒する極論者。
右も左もどうぞご勝手に。もう偏向報道の海域から抜け出すのさ。
愛国主義に誇りを持つのさ。真実を見据えろ、国民よ。
「ナショナリズムだ!カーニバルの朝だ!」
そうだ、朝が来るぞ。新しい朝が来る。
バスタブから世界へ
まぁ驚いた、君はぶくぶく泡立てながら沈んでいく可愛い子ちゃん。
まぁ不思議だわ、ひとり海の底で暮らす無色透明な待ち人さん。
でも何で、どうして、楽しい世界よ。「いままでありがとう」なんて。
まぁ素敵だわ、君はふわふわマシュマロみたいな笑顔見せる可愛い子ちゃん。
まぁ驚いた、生まれ死に往くこの世界の無色透明な待ち人さん。
眩しくて、眩んで、自由な世界よ。浴槽が溢れるまで。
ユレルリカレリ
君はまだ 四畳半のシンガプーラ
停留所でお嬢さんに見惚れてたの
僕はまだ ホームランボール捨てられない
駄菓子屋のノープランボーイ 心配ですわ
ユ・レル・リ・カレ・リ
月曜には生まれてないから
日曜は死んじまってるんなら
本能には逆らえないから
本性は縫い付けておいたから
君はただ ボールペンを口に咥えて
ベランダのお母さんの真似事だっけ
僕はただ チョコのバットを振り上げた
寝室のノープランガール 心配ですね
ユ・レル・リ・カレ・リ
熱病 然 湯冷めが酷いから
一挿話 審理待ってるんなら
問答には山場がないから
オンオフは突き付けておいたから
ユ・レル・リ・カレ・リ
月曜には生まれてないから
日曜は死んじまってるんなら
本能には逆らえないから
本性は縫い付けておいたぜ
ユ・レル・リ・カレ・リ
レイコンマも無駄できないから
生存計画捨てたんなら
ノープランで生きていくんなら
ホームランもいつか打てるんじゃない?
耕す人々
「働け働け、耕す人々よ。きみたちはわたしの奴隷なの。
働け働け、耕す人々よ。逃げたら土に埋めてしまうから。」
『預言者が書いた手紙がさ。わたし達にも届いたから。
世紀末のこの日くらいはさ、あなたに逆らってショーパブで最後の酒盛さ。』
「働け働け、耕す人々よ。汗水を拭っている暇はない。
働け働け、耕す人々よ。きみたちはわたしの奴隷なのだよ。」
『預言者が書いた手紙がさ、わたし達にも届いたから。
世紀末のこの日くらいはさ、あなたに逆らってショーパブで最後の酒盛さ。』
『箒も桑も投げ捨てたから、わたし達はもう自由だから。
予言の通り世界が終わるなら、わたしはそうでなくてもショーパブで最後の酒盛さ。』
「働け働け、耕す人々よ。あいつのようになりたくなければ。」
東京バレエ
東京デート、ボーイ&ガール。
ほつれた靴ひもを結び直す彼の横顔。
雪解けの青に春が泳いでる。
アン・ドゥ・トロワ、踊る少女。この世は君のもの。
自転車の車輪のように転がれよ。どこまでも転がれよ。
今以上生きる答えを探す。
お悩みは押上のタワーの上から捨てて。
あなたが決めたあなたになれる。
この街で生まれて土に帰るまで飛んでけ。
東京バレエ、踊る少女。
ウィンドウショッピング、ボーイ&ガール。
あの夢も恋の行方も全力で駆けるから見ていてね。
今以上生きる答えを探す。
わたしとして生まれてわたしとして生きていく。
わたしが決めたわたしを目指す。
この街で生まれて土に帰るまで飛んでけ。
機巧喫茶
目を覚ました
このメトロポリスで
スモールトークの中に
きっと答えはあるよ
きみが探しているものは
ぼくら否定したものか
ログを書き出して
曇ったきみの瞳映る
ぼくは誰
同じ日々を
繰り返しているの
機械のように
ぼくらは繰り返しているの
はじめて君がした仕草
当たり前のような言葉
夢を抱きしめて歩くきみは
《人間》だった?
「今日のお話はね」
きみの優しい声
コーヒーに浮かぶ泡のように 儚げに
夢を見た
このメトロポリスで
淘汰圧の先には
何が待っているだろう
きみが探しているものは
ぼくが探しているものか
夢を抱きしめて笑うきみは
《アンドロイド》だった?
この部屋の中で
きみとぼくは等しくて
朝凪、窓辺に淡い青
ピアノが鳴る
「今日のお話はね」
ちょっと寂しげな声
起動した朝に戻ってゆく きみの夢
ほら、朝
また、朝
ガール/蜜/ボーイ
はじめて わたしは あなたの ことを知る
はじめて あなたは わたしの ことを知る
放課後 夕映え 教室の中
わたしとあなたが繋がる魔法
わたしは知らない あなたを知らない
指先から伝わる温度も
わたしの知らない あなたを知りたい
どんなミーツより 甘い蜜の味
それから わたしは あなたの ことを知る
それから あなたは わたしの ことを知る
帰り道 熱病 ひみつの恋も
きれいな夕焼け 1度きりの青春よ
あなたは知らない わたしを知らない
見知らぬ街で 踊る夢を見て
あなたの知らない わたしをあげる
いつもの場所で いつもの日課を
あなたの反応が嬉しい
制服のスカートにしまった ひ・み・つ
あなたの知らない わたしをあげる
ふたりのペースで いつもの日課を
わたしの知らない あなたを知りたい
どんなミーツより 甘い蜜の味
「わたし、好きな男の子がいます。」
旅客機
あなたは七の月の緑の海、飛び込むパイロット
窓が朝を覆う雲のように拡がる
仕掛けは朽ちて崩れ噛み合わずに回り続けるだけ
オーライオーライの低い掛け声で
水を飲んだ
コックピットのクルーたちは騒ついて
冷めたポテトパイ頬張った
「いつから わたしは」
神様ありがとう
わたしが生まれたのは鈍く唸る制御室の真ん中
ディスプレイのメロドラマが歯車回す頃に
鈍く唸る筐体が浮上して鳴いた
あなたは海中の籠の鳥だった
夏服を翻し、エンジンの上でジェットコースターのようにはしゃいだ
魚は朽ちた機体の中に棲むわたしのお友達
オーライオーライの高い声真似で
水を飲んだ
楽しいことも焼けるような痛みでも
焦げたポテトパイ頬張れば
「いつから わたしは」
神様ありがとう
わたしが生まれたのは鈍く唸る制御室の真ん中
ディスプレイのメロドラマが歯車回す頃に
白く錆びた白鯨よろしく哀しく鳴く
神様ありがとう
わたしが生まれたのは
鈍く唸る制御室の真ん中
神様ありがとう
わたしが溺れたのは鈍く唸る制御室の真ん中
ディスプレイのメロドラマが歯車回す頃に
鈍く唸る筐体が渦を巻き飛んだ
掃除機
お掃除 お掃除 ピカケの香りで
お掃除 お掃除 水際立った夢を
左心室の不協和音が子守唄
しじまのまにまに 翠雨の囁き
お掃除 お掃除 退廃の箱の庭を
横隔膜の不協和音で埃が舞う
くだらないね
汚れちまってんだ、わたしの世界は
ネジを巻いて糸を吸い尽くした、65dBの怪物さ
心地良いね
汚れきった世界は、わたしを赦すんだ
だけどなんで 怪物の狂った歌声が流れる
お掃除 お掃除 ラム酒の香りで
お掃除 お掃除 発作起こすお姫様
複写機
街はパズルの継ぎ目を舗装工事
眼前にパイオニアらの思念の海
アパートベランダの海岸でスモーク 火を点ける
メトロの風に乗り、1・2・3で波を読む
知らずに盛り上がる、3・2・1でピースサイン
訝しげに空を見上げた
ビルは液状化崩れて一大事
透明なパイオニアらの信念は埋めよ
アパートベランダの海岸でスモーク 火を点ける
「君が見る本物は?」
で、何が不満? 道化、ゴシップ シロップみたいに甘く
まだ足りない? 楽しいもの、美味しいもの全部
まだ足りない? ボタンひとつ押す単純な作業
複写された踊るトルソー
夢の外は機械仕掛け
砂のレプリカ
で、何が不満? 道化、ゴシップ シロップみたいに甘く
まだ足りない? 楽しいもの、美味しいもの全部
まだ足りない? ボタンひとつ押す単純な作業
淘汰された我はトルソー
夢の外は機械仕掛け
彼女
言葉を選ぶ、あなたの前では嘘つくの。
啓蒙書を日々めくる、あなたは輝いていた。
でも恐いから。
「そういう考え方はよくないよ」と繰り返すから、
諭されるから。
彼女はもう疲れてしまった。
ねぇ給水塔の上で彼女は待っている。
あぁその背中にかける言葉(もじ)をあなたは捨ててしまったのね。
「気にすることないよと言ってるくせに
気にしているのはあなたじゃない?
なんでもありだと言ってるくせに
シナリオ(縛り)を設けたのはあなたじゃない?
その啓蒙書に囚われているのは
あなたじゃない?」
ねぇ給水塔の上で彼女は待っている。
あぁその背中にかける言葉(もじ)をあなたは捨ててしまったのね。
さぁ足元の空に身を投げて彼女は旅立つの。
「そう、これがわたしの選択よ、自由でしょ? ねぇダーリン」
ルフトハンザ
目蓋を下ろすと思い出す。
楽しい思い出が降り注ぐ。
あなたから、わたしから、溢れ出す感情が、
わたしへとあなたへと飛んでゆく。
優しい記憶を辿り出す。
眩しい光に目がくらむ。
商人が歌い出す人生の労働歌。
懐かしいメロディーを口遊む。
さぁ、心地良い雲上の旅へと。
この世界の半分も楽しんでいないであろうあなたは、
まだまだ経験を続けなさい。
また、あなたとトラムポルカ。
さぁ開いてロンリープラネット、どこでもゆけるわ、きっと。
さぁ、心地良い今生の旅へと。
この世界の半分も楽しんでいないであろうわたしは、
あなたと経験をともにしてみたい。
もう一度退屈な話を変わらぬ饒舌で。
あなたはあなたの世界でまだまだ経験を続けなさい。
目蓋を下ろすと思い出す。
楽しい思い出が降り注ぐ。
風景に彩りを。音楽に抑揚を。
あなたから、わたしから、溢れ出す感情が
わたしへとあなたへと飛んでゆく。
どこまでも青い空へ、飛んでゆく。
手抄
月代の町は圓い花萎ませて
鶸色の袂踊らせ舞うは君かな
恋しい人を想う末枯れの風車
花が咲き思い出すはあの一会
一年後 君はまだ 艶やかな風景画のように
わたしを 季節を 飛び越えて 雨を降らす
認めた手抄が滲む夜 泡沫の君
玲瓏で飴色な恋の季節が蘇る
君のお気に入りの この書き抜き読む頃は
染み出た客愁も 秋空の雲となる
十年後 君はまだ 艶やかな風景画のように
わたしは 今でも 後ろ髪を引かれたまま
認めた手抄が滲む夜 泡沫の君
玲瓏で飴色な恋の季節が蘇る
傘をさす 君はまだ 艶やかな風景画のように
わたしを 季節を 飛び越えて 雨を降らす
認めた手抄が滲む夜 泡沫の君
玲瓏で飴色なあの季節に君はいる
Yawning Crow
今、世界と眠る。
『ヨールォライヨーライステレレエイエ』
構想、妄想を語る。
『ヨールォライヨーライステレレエイエ』
光が、世界が、君を包み込んでも。
呼吸は、細胞は、孤高な黒に染まる。
ビルの山を越えて、
凍った都市、羽休め。
集合住宅、室外機の上。
『ヨールォライヨーライステレレエイエ』唱えた。
繭の中、落ちてく君は錆びて。
檻の中、血の匂いに眩んで。
もう一度、空を飛ぼう。
冬が融けるまで。
空漠たる絶望が、君を包み込んでも。
一挙手一投足が君を突き動かすのだ。
今、世界を渡る。
『ヨールォライヨーライステレレエイエ』
そして、あくびひとつ。
『ヨールォライヨーライステレレエイエ』唱えた。
繭の外、落ちてく君は毀れて。
檻の外、草の匂いに痺れて。
もう一度、空を飛べよ。
春が芽吹くまで。
今、世界は眠る。
今、あくびひとつ。
衛星少女のひとりごと
カットソーお似合いの衛星少女が聴きはじめたシューゲイザー
あと何年か憂鬱を食すのか ワームホールに投げ捨てた
インタラクティブなコミュニケーションより自動販売機が好きよ
PM7時に箱に降り立って 鼓膜震わせ Affection
あぁ 君の背中 白く光る
わたしを今日も君は殺してくれるかな
昨日から始めたToDoリストが三桁の山 登山拒否
ファッション雑誌 小さな海のスープ 新しい船旅のお供
ミラーレス ポートレートが大好き SDはもうパンパンで
あと何年か退屈を食すのか 意識狂わせ Ascension
あぁ 君の背中 白く光る
わたしを今日も殺してくれないか
撃ち抜いてレミントン 優しい瞳で
わたしが死ぬまで目を逸らさないで
轟音の中でサイレンが鳴るまで
わたしはわたしと退屈なコミュニケーション
重力手放し 漂うサハラ
捉えて 外れて 概念の宇宙紀行
撃ち抜いてレミントン
君の宇宙でわたしは死ぬまで目を逸らさないよ
静寂の中で語り終われば
次のわたしを探しに旅に出よう
天文部室
待ち合わせは天文部室。
ケプラー、ガリレイ、コペルニクスも今日はカゼでお休みね。
文化祭のプラネタリウムの準備をまた投げ出して君は星のプールに飛び込んだ。
ここは誰にも教えられない。
プランク、ノイマン、シュレディンガーにも教えてなんてやるもんか。
待ち合わせは天文部室。パラダイムシフトをもう一度。
君は星のプールに飛び込んだ。
君だけが泳ぐ世界、とこしなえに続く銀河の見る夢さ、バタフライで渡ろう。
君の手で創る世界、100%自由に星を撒き散らしてよ。
それは誰にも教えられない。
トレミー、ハッブル、アインシュタインにも教えてなんてやるもんか。
合言葉は天文部室。パラダイムシフトをもう一度。
君は星のプールに飛び込んだ。
君だけが泳ぐ世界、とこしなえに続く銀河の見る夢さ、バタフライで渡ろう。
君の手で創る世界、100%自由に星を撒き散らせよう。